【学会・研修会】第19回長寿医療研究センター国際シンポジウムをWebで視聴
第19回長寿医療研究センター国際シンポジウムが愛知県名古屋市で開催され、Webでの視聴も可能ということだったので見てみました。
デジタルヘルスケア:健康、医療、福祉の架け橋」というテーマのもと開催されシンポジウムでした。
役人、Dr、エンジニア、セラピスト、海外のDrなどが演者として招かれており、デジタル技術の導入や課題への対応、未来のヘルスケアのビジョンについて議論されていました。
結構面白かったです。
ジョブボラに関し
『「ジョブボラ」の創出とデジタルマッチングの実装に向けた研究:誰もが活躍できる社会を目指して』研究プロジェクトを開始します。
ジョブボラ= Jobs + Volunteering
デジタルを活用した高齢者と仕事・ボランティアをつなげようというプロジェクト。
高齢者の特性に応じてジョブボラをマッチさせることが重要らしい。
例えば、頭を使う作業がいいのか、身体を使う方がいいのか、単純作業をこなすのがいいのかなど。
また、スマートフォンでの登録や申し込みになるため、そこをヘルプを出してあげる必要性はある。完全に使いこなせている高齢者は多くない。
アシスタントやコーディネーターの存在は欠かせない。
フィンランドのデジタルヘルスケア事情
フィンランドのデジタルヘルスケアは、世界でもトップクラスの先進的なシステムが導入されている。
国全体で医療情報のデジタル化が進み、データの統一と効率的な活用が行われているのが特徴だ。以下、フィンランドのデジタルヘルスケアの主なポイントをまとめる。
Kantaサービス
フィンランドのデジタルヘルスケアの核となるのがKantaという全国規模の電子医療プラットフォーム。患者、医師、薬局が医療情報を共有できるように設計されている。
- 電子処方箋(ePrescription)
- 医師が処方箋をデジタルで発行し、全国どこの薬局でも処方薬を受け取れる。紙の処方箋はほぼ廃止。
- 電子患者記録(Patient Data Repository)
- 医療機関間で統一された電子カルテを使い、どの病院でも患者の医療履歴を確認できる。
- Omakanta
- 患者向けのウェブポータルで、自分の診療記録や検査結果を確認できる。患者がデータの共有範囲を管理することも可能。
デジタルツールの活用
- 遠隔医療(Telemedicine)
- 医師と患者がオンラインで診療を行う仕組みが普及。特に地方では移動の負担を軽減する手段として有効。
- AI診断
- フィンランドはAI技術の導入にも積極的。画像診断や病気のリスク予測にAIが使われている。
- ウェアラブルデバイス
- フィンランドではウェアラブルデバイスを使ったヘルスモニタリングが進んでいる。例えば、心拍数や血圧のデータをリアルタイムで収集し、医師と共有するシステムがある。
ビッグデータと予防医療
フィンランドでは医療ビッグデータの分析を活用して、疾病予防や政策立案が行われている。
- GeneRISKプロジェクト:
- 遺伝情報と生活習慣データを使って心血管疾患のリスクを予測する研究が進められている。
- 予防重視のヘルスケア
- 健康診断データの共有を通じて、早期発見や生活改善が推進されている。
こんなデジタルデジタルで個人情報大丈夫なのであろうか。。。
もちろん、抜かりはありません。
プライバシーとデータセキュリティ
フィンランドでは患者のプライバシーを守るために厳しいデータ保護規制が設けられている。
- 患者の同意管理:
- 患者がどの医療従事者に自分のデータを閲覧させるかを決められる。
- セキュリティ強化
- データは暗号化され、アクセスログも記録されるため、万が一の不正アクセスに対応できる。
政府の役割と政策
フィンランド政府は医療システムのデジタル化を国家プロジェクトとして進めており、これが成功の鍵となっている。
- 全土で統一されたシステム
- 医療情報が全国的に統一されているため、どの地域でも一貫した医療サービスを受けられる。
- 公的医療機関の連携
- 公共医療機関がデータベースを共有し、患者ケアが効率化されている。
データの一元化が進んでおり、ビッグデータとして統合しやすかったり、シームレスにケアできるのが強いですね。
しかしこれと似たようなこと日本でするとなると大変そうですが、徐々に進んでいくのでしょうかねぇ、、、
Long-term Care Information System for Evidence(LIFE)に関して
Start of Long-term Care Information System for Evidence(LIFE) は、日本の厚生労働省が推進する、介護データを活用したエビデンスベースの介護サービス提供を目指した情報システム。このシステムは、高齢者の介護サービスの質を向上させると同時に、政策立案や研究に役立つデータを提供することを目的としている。
LIFEシステムの概要
- 目的
- 高齢者介護におけるデータ駆動型のアプローチを採用し、エビデンスに基づいた介護の質向上を目指す。
- 介護サービス提供者が日常的に記録するデータを集約し、分析・フィードバックを行う。
- 利用者一人ひとりに適切な介護計画を提供し、生活機能の維持・改善を支援する。
- 対象
- 特養、老健、デイサービス、訪問介護など、介護保険制度を利用するサービス全般。
- 仕組み
- 介護事業者がLIFEシステムにデータを入力。
- 集められたデータは統計的に分析され、結果が介護事業者や行政にフィードバックされる。
- 分析結果を基に、介護計画やサービス内容の改善が行われる。
具体的な機能と仕組み
- データ収集
- 利用者の身体状況やケアプラン、日常生活の状況などを記録。
- 例えば、ADL(基本的日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)に関するデータ。
- データ分析
- 集められたデータを分析し、全国的な介護の現状や課題を把握。
- サービスの効果測定や改善点を明確化。
- フィードバック
- 分析結果を介護事業者に返すことで、具体的な改善指標を提供。
- 例えば、「ある特定の介護手法が利用者の生活機能にどう影響しているか」を知ることが可能。
- 政策立案や研究への活用
- 集積されたデータは、介護保険制度の改革や新たな介護政策の設計に活用。
- 介護研究の基盤データとしても利用される。
LIFEはフィンランドのKantaシステムのような全国規模の統合医療データシステムと似た部分がある、が、、、LIFEは介護に特化しており、フィンランドのような医療全体を包括するシステムとはスコープが異なるわなぁ。
アプリ開発
みなさんアプリ開発してますね。
情報を入力したり、スマホでやウェアラブル端末で活動量やバイタル等を取得してフレイル予防のための点数を出したり(東京都健康長寿医療センター)、オーストラリアでも転倒予防のやフレイル予防のためのエビデンスベースなアプリがあったり(StandingTall)。
運動なんかをした後には、評価があって、何かしらのフィードバックがあったほうがやる気は長続きしますよねぇ、
内的な動機づけに繋がっていく気がします。
地域のサロンとかでフレイルチェックのために評価する際、どのように評価結果をフィードバックするか悩んでるんですけど、(今はスプレッドシートとChatGPTをAPI連携して即時フィードバック)
みんながアプリ入れてて、それに評価項目を入力すると、個別に最適化されたフィードバックが返ってくるって感じになればいいですね。さらにそれは保存され、身体機能変化の経過を見ることができると。
おわりに
10時から17時まで、わりとみっちり。
診療、勉強会、学会、シンポジウム、、、
Drの体力はやっぱりすごいなと感じました。
医療の未来を考える上で、デジタルヘルスケアの進化は避けて通れないテーマです。
LLMをはじめとする生成AIの急速な発展は、私たちが医療情報を活用し、患者ケアを進化させる可能性を大きく広げてくれます。
しかし、日本においては医療情報の統合やデータ活用の仕組みが十分ではないことも事実であり、これをどう乗り越えていくかが今後の重要な課題かもしれませんね。
計算機自然(デジタルネイチャー)の世界において、デジタルとアナログの境界線が曖昧になるように、医療分野でもその壁を越え、患者と医療従事者がシームレスにつながる社会を目指す必要がありそうです。
国際シンポジウムで共有された知見や議論は、その実現への重要な一歩となるとかんじました。
これからの医療がどのように進化し、私たちの生活をどのように変えるのか。
今回のシンポジウムを通じて、その未来が少しでも見えた気がします。